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三章『龍央宮』 17
2010/02/08(Mon) 21:44
風舞う国の物語 龍央宮
とある噂があった。
家臣たちの重い口をさらに重くさせていた原因はその噂に他ならなかった。
それは、
賊の中に、王家の血を継ぐ者がいるかもしれない―――というものだった。
事実かどうかはわからない。
ただ、信憑するにまったく値しないというものではなかった。むしろ、その疑惑は濃厚で、何年も前から家臣たちの間では根強く囁かれていたことだった。
砂漠を荒らす嵐は古の王が都を守るため、半永久的に消えぬよう意図して生みだしたものだという。
王家の人間は砂龍の言葉を理解することが出来る。―――だが、それ"しか出来なくなった"のは、ここ最近になってからのこと。
先々代、つまりラヴェルの祖父の代までは、王家のみが持つとされる恩寵の力は衰退こそすれ、龍と会話をすることも、嵐を操ることも―――ときには声が届かぬであろうはるか遠くにいる龍を自らの元へ呼び寄せることさえも出来たという。
守護獣が長くその土地に留まれば、その分その国の大地は肥え、緑が増える。ザンヴィストも同じ理屈で、白虎の恩恵を受けて繁栄の道を進んでいる。
ファンデルダークはそうやって自分らの国の自給率を保ってきた。
砂漠都市や軍事都市と言われ、軍事産業のみに精を出していると思われがちだが、実際は食物生産にも力を注いでいるため他国への依存度が低い。
すべては龍の恵によるものだ―――ということはファンデルダークのみが知るところである。
―――王家の血を引いていなければ、あの嵐の中で生活を送るのは不可能だ。
誰が言い始めたということはない。皆が皆、頭の中で薄々思っていた。
水場―――向こうの世界で言うところのオアシス―――はすべて軍が管理しているため賊が近づくことはできない。だが、農村のほうから水を入手することは可能だろう。
しかし昼夜の温度差に耐えられるだけの宿泊施設を建てることはまず無理だ。風が強すぎて、骨組みを立てる前に潰れてしまう。
そうなると、誰しも頭に浮かぶ考えはただ一つ。
―――ラヴェル陛下"以上"の力を持つ王家の人間が混ざっている、ということだ。
王家の人間が関わっているとなると事態はただの賊討伐だけではすまなくなる。
いくら国を脅かす賊とはいえ、王家の血は王家の血。しかも、嵐を操れるほどの力を受け継いだ王家の人間は今の王宮にはいない。
家臣たちは思った。
……訓練をすれば、嵐を操るだけでなく、あわよくば全盛期のように、龍を呼び寄せることも可能になるのではないか、と。
繁栄。富。心を揺さぶる響き。
時間をかけて育てた作物を何度も何度も踏みつぶされ、心も体も疲弊しきった農民たちを癒すには龍の恩恵は絶大な効果を発揮するだろう。
…しかし。
賊を滅ぼすとなるとそこには必ず犠牲が生まれる。戦いには死が伴うものだ。王家の人間も例外ではない。もし、王家の者が賊を率いているとすればなおのことだ。
かといって、王家の者だけを保護したと言えば、喜ばれる一方、一部では示しがつかないなどと批判の声が飛ぶかもしれない。
―――すべては王の判断に委ねるしかない。
王が意見を述べるまではその話題を公の場では口にしないことが、王宮内での暗黙の了解だった。
それを、よそ者の若輩者タスクが破ってしまった。―――よりによって、本人の目の前で。
場はしばしの沈黙と、直後の動揺の渦に呑み込まれた。さすがのユハもそのときばかりは笑みを消さずにはいられなかったという。
『陛下。昨日今日我が国に来たばかりの蓬莱人の言うことなど耳に入れてはなりませぬ』
誰かが立ち上がり声を上げた、次の瞬間。それまで頬杖を突いて会議を聞いていたラヴェルが瞼を上げた。ざわめきが一瞬で引いていく。
ユハ曰く、普段はまぬけな表情をなさっておりますが、実のところでは冷静沈着で頭もキレる、私どもにとってはかけがえのない頼れる王なのです、らしい。
……すごく、嘘っぽい。ラヴェルのどこに頼れる感があるのかさっぱりわからない。自称たらしだぞ。
と思ったことがどうやら顔に出てしまっていたらしく、ユハは「まぁ信じてもらえない気持ちもわかりますけど」と苦笑した。
『軍を率いて巣をつつけばどれだけの人数が出てくるかわからない。我が国は戦に手は染めんぞ』
『私が一人で参ります。巣ごと叩き潰して賊首を連れて帰ってきましょう』
『……本気で言っておるのか?』
ふたたびざわめきが部屋中に満ちた。
そしてそのざわめきは直後のタスクのひと言により爆発的な罵声に変わった―――
『お望みとあらば、陛下と同種のメイシィも、共にお連れいたしましょう』
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※砂漠の国過去物語。説明が多く、つまらないかもしれませんがお付き合いのほどよろしくお願いしますm(_ _)m
三章『龍央宮』 16
2010/02/07(Sun) 12:40
風舞う国の物語 龍央宮
*
宮仕えとしての役職が決まるまでは一週間ほどかかるという。
しかし美和の場合、蓬莱人の中でもめずらしく武道に長けた者だからもう少し長くなるかもしれないとユハは言った。
試験の付き添いが終わるとユハは宮廷絵師としての仕事があるらしく、美和は一人屋敷に取り残された。
なんでも、最近龍央宮の庭の一部を造り直したとかで、絵に写し届けて欲しいと言われたらしい。見たいと仰ってる方がいるからと。
誰が見たいの? と問うと、ユハも知らないと言った。
そのような仕事を引き受けるのかと訊くと、
―――自分は描けと言われたものを描き、頼んだ方へお渡しするのみですから。とさして気にしている様子もなく答えた。
頼まれる仕事をいちいち怪しんだりおかしいなどと疑っていては勤まらないのかもしれない。それはそうかもしれない―――が、ユハだから気になるのだ。ユハだからこそ、気にせずにはいられない。
玄関を出て、さらに門まで、果ては仕事場にまで着いていこうとする美和に、ユハは苦笑して足を止めた。
「危ないことなどありませんから。それに私は久しぶりに講義以外の仕事が入って嬉しく思っているくらいです。ご心配は無用ですから美和は屋敷の中で大人しく待っていてください」
ユハたち画員は祭典などのときの記録画作成や今回のように個人的に頼まれた仕事があるとき以外は、未来の宮廷絵師を目指す少年絵師たちに講師として弁をふるわなければならないらしい。
三章『龍央宮』 15
2010/02/05(Fri) 18:09
風舞う国の物語 龍央宮
この世界では誰かを守るとき背中に隠すのではなくて抱きしめるというのが決まりなのか? だとしたら、なんと心臓に悪いことだろう。
スキンシップに慣れていない美和にとって、男に、それもいきなり、抱きしめられるというのは、混乱も鼻血も越えて、一瞬魂が飛ぶのだ。だからもう、やめてくれ、と思う。気持ちはありがたいが、勘弁してほしい。
―――しかし、美和の願いは届かず、ユハはいっそう強く美和を抱き込んでますますイヴァンへの警戒を強める。とろけそうな笑みが、怖い。
だが、こういうところを見ると彼もそれなりに鍛えているんだなぁと思う。シヴァよりは薄いがかたい胸は頼もしいし、腕にも一応筋肉はあるようだ。どくどくと規則正しく命を刻む鼓動が聞こえて、ほっとする。
「まぁ、剣を扱うヤツは自然と仲がよくなるってことよ。てか、トモダチになるのに時間なんて関係ないだろ。俺とユハっちもそうだったじゃん」
ユハっち。……華の画員と呼ばれる一方ではそのようにも呼ばれているのか。おそらくイヴァン限定だろうが。それにしてもずいぶんと華がない。
そう呼ばれてもユハがまったく否定しないところに驚いた。
「美和とイヴァンさんでは立場が違います」
「でも俺たちはもうトモダチだよな、美和?―――あ、もしかして様付けのほうが好みだったりする? だったら直すけど」
ユハの腕の中で美和はぶるぶると強く首を振った。イヴァンは真夏の太陽のようににっと笑って白い歯を輝かせた。
「というわけでユハっち、これから美和は俺の正式なトモダチだから。そこんとこよろしく」
「よろしくされません。なに言ってるんですか。まともな接触もしていないのにトモダチになどなれません。認めませんよ」
ぷうっとイヴァンが頬を膨らませる。子供か、と思った。
「ユハっちに認めてもらわなくたってかまわねーよ。俺と美和の問題だし」
「美和の問題は私の問題ですので」
けっていかも
トップに書かせていただきましたがもしかすると気づいていない方もいらっしゃると思いますので
一応ここでもお知らせさせていただきますね(^ω^)
えと、
佐槻のホームページの公開日が決まりました!!(´∀`人)
2月14日 です(多分!)
クリスマス、正月となにかしようしようと思いつつ結局なにも出来ないまま2月…orz
いろいろと計画を練っていらっしゃる方やすでにバレンタイン特別企画を開始している方々に触発されて
佐槻もようやくやる気が出ました!!(遅
いつ公開するんだろーとちょこっとでも気にしてくださっていたかたおられましたら本当にすみませんでしたっっ!!
一昨日あたりから苦手なパソ仔さんと共に必死に作りました♪
っていっても出来立てで、お見せできるようなものはほっとんどないんですけどね!!爆
一応オリジナル小説サイトです。
新作書きます。
ジャンルはやっぱり異世界恋愛FT!
内容は………
(その作品だけでも楽しめるかと思いますが)風舞う国の物語で登場した方が主人公のもう一つの物語です。
お楽しみに!!
それではお知らせでした(^ω^)ノシ
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